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高級ブランド戦争―ヴィトンとグッチの華麗なる戦い高級ブランド戦争―ヴィトンとグッチの華麗なる戦い
ステファヌ マルシャン
駿台曜曜社 刊
発売日 2002-11


ヴィトン、グッチ、エルメス、プラダなど、狂乱する高級ブランド人気と業界内の熾烈な競争を、世界的スケールで暴いてみせた衝撃作である。ヴィトンはじめ約40社を有する世界最大規模の複合ブランド企業、ルイ=ヴィトン・モエ=へネシー会長のベルナール・アルノー、グッチ社長のドメニコ・デ・ソーレ、ディオールの主任デザイナー、ジョン・ガリアーノなど、華やかな舞台の表と裏で跋扈(ばっこ)する人物も多彩に紹介しながら、圧倒的な緻密さと迫力、スピードで展開させていく。
著者は、高級紙「フィガロ」の経済部門の副編集長で、フランス人ジャーナリストのステファヌ・マルシャンだ。ワシントンやイスラエル駐在の経験もあり、国際感覚を持ち合わせた抜群の経済通として知られる一方、フランス人特有の美意識で、狂騰するブランドビジネスの功罪に斬り込んでいく。また、「世界で一番ブランド好きな民族」と揶揄(やゆ)される日本人のなりふり構わない購買欲に、痛烈な批判を浴びせる点も見逃せない。
華麗なビジネスの裏側の想像を絶する戦争は、どんな超一流メゾンであっても一刻たりとも安穏とできない弱肉強食のサバイバルゲームである。買収、ライセンス取得、訴訟、倒産、広告戦略。膨大なビッグマネーが瞬時に動く戦慄の舞台裏を一度覗いてしまった者は、この先街で目にする華やかなブランドアイテムを、非常に複雑な思いで見つめてしまうだろう。(田島 薫)

ファッションビジネスやブランドに興味がある人は必読本。 2005-04-03
この本の主役は、ディオール、グッチ、イウ゛・サンローラン、プラダ、シャネル、バーバリーといったファッションのトップブランドたちだ。そこにアレクサンダー・マックイーン、ジョン・ガリアーノ、ジル・サンダー、アズディン・アライヤ、ジャン・フランコ・フェレ、カルバン・クライン、アルマーニ、ベルサーチ、ピエール・カルダンといったデザイナー(本の中ではスタイリストという肩書き)が総出演している。著者の関心は、徹底してそのビジネス的側面にある。いかに彼等が作る服が創造的かなどということには、一行も言及していない。その分、グッチのトム・フォードの契約内容とか、彼がどれほどの富をいかにして得ているかとか、ジル・サンダーの身売りがいかに行われ、どのように速攻決裂したかなどが具体的数字と共に述べられている。本は、世界のブランドビジネスをリードするLVMHと、その敵陣営であるグッチグループが激しく敵対的買収合戦を繰り広げるところから始まる。これに比べたら、最近のライブドアとフジテレビのことなど、無邪気な子供のけんかのように見える。ヨーロッパでは、国ごとに異なる法律の差を駆使して、ものすごい頭脳戦が繰り広げられている。日本では「本物」の代名詞のように言われているルイ・ヴィトンも、この本の中ではかなり表層的なブランドとして扱われ、本場フランスではエルメスの方が断然本格派だと評価されているなど、「そうなのか」という新たな発見も多かった。後半では、高級ブランド品として、時計、芸術品、宝石などにもふれらているので、世界の高級贅沢品ビジネスの概要が理解できる。夢とロマンとクリエイティブと同じ分量だけ、現実と野心と攻防がある。ブランドビジネスという目も眩む満月の裏側を露骨に見せてくれるこの本には、まさに高級贅沢品業界の舞台裏そのものが描かれている。


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